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熊日賞 グランプリの21世紀アート大賞

熊本日日新聞新聞社提供
2000年11月9日付朝刊、熊本日々新聞1面

 熊日総合美術展「21世紀アート大賞2000」の審査が八日、熊本市世安町の熊日であり、グランプリの21世紀アート大賞(熊日賞)に許斐(このみ)良助さん(42)=天草郡大矢野町=の立体「漂泊のかたち」が決まった。

土の性質を生かして、化石を連想させるようなシャープなフォルムを表現した

同3面、「人」欄でのインタビュー記事

 平成10年から連続出品し、3度目の正直でグランプリを射止めた。
受賞の報に「作品が割れてしまったっていう知らせかと思いましたよ。同じシリーズの作品で他の公募展に入賞していたので、いけるんじゃないかとは思っていたのですが・・・」。
天草陶石を使った磁器と、黒泥土で焼いた陶器を組み合わせた受賞作「漂泊のかたち」。熊本市の詩人・庄司祐子さんに命名してもらった。
 動物の骨を思わせる独自の質感は、試行錯誤の課程でほぼ偶然に作り出された。
「表面にベンガラ(酸化第二鉄)を塗った後でふき取り、焼き締めたらこうなりました。窯の窓からのぞいて、初めてこれが見えたとき鳥肌が立った。天草陶石がなければこんなリアルな表現はできなかったでしょう。」
 天草郡大矢野町の維和島に生まれ育った。九州産業大芸術学部で油彩画を専攻し、帰郷して小・中学校の美術教師に。授業の空き時間に廊下でろくろを回していて「こっちの道がいいな」とふと思ったのが、陶芸の道に進むきっかけだった。
 本渡市や熊本市の窯元で修行後、平成四年に同島に「蔵々窯」を開いた。修業時代には、目の見えない人たちのための「手で見る造形展」を企画。現在は子供たちに陶芸を教えたり、今春には天草の八窯元でつくる「天草陶磁器振興協議会」を立ち上げるなど、地元に密着した活動を続けている。

 12月5-10日には県伝統工芸館で個展を開くほか、来年は福岡・天神での個展も予定している。「これからは県外へ、あわよくば東京にも進出したい」と意欲を燃やす。
 大矢野町で、妻と子供たちの5人暮らし。

思いがけなく大賞を頂きました。熊日新聞社の許可を得、記事を転載,ご紹介しております。



審査員評

大沼 映夫氏(洋画家)

表現したいもの明確に


 初めての審査だが、九州はレベルが高いという印象を裏切らない内容。グランプリは造形、色、質感共に美しく、オブジェとしての存在感がぬきんでていた。次席は一筆書きのようなズッパとした線が新鮮。上品にまとまりすぎたのが残念だ。写真やCGなど、新しい技法を使った作品も増えているが、表現したい「もの」をはっきりさせてほしい。でないと、訴える力がなくなる。

金子 賢治氏(東京国立近代美術館工芸課長:当時)

もっとプロが参加を


 審査は3回目。立体が印象深く、絵画は飛び抜けたものがない。よそでは絵画の方が強いので、熊本独自の傾向ではないか。大賞作品は、プロの第一線で勝負できる実力がある。他の彫刻素材ではでないような質感があり、キャリアが感じられる。次席はアイデアの勝利。日本文化の重層的な部分を表現したのだろうか。全体として、もっとプロが参加して一緒に盛り上げてほしい



酒井 忠康氏(神奈川県立近代美術館長:当時)

例年に比べ鮮度高い


 今年は例年に比べ鮮度が高かった。大賞の陶磁器をはじめ、写真を使ったプリントやCGなど新しい技法を使った作品が目につき、一種の世代交代を感じた。パンや電車のつり革など、身近な題材を選んだものが多かったことも収穫。普段の生活に多くのテーマがあることを教えてくれる。今後は学生などが教わった技術でなく、自分の技法、テーマで挑戦してくれることを期待したい。

滝澤 具幸氏(日本画家)

─ 参加することに意義 ─


 大賞は、マンモスの牙のような、形と質感のおもしろさで成功した。まるで生きていたものが生命の痕跡だけ残して別の形態に変わったような、不思議なイメージがある。次席は絵を描く楽しさを良く知っている人。テクニックを見せずにセンスで描きすぎる嫌いはあるが、底辺にある素朴さがいい。全体的に幅広い層から出品されているが、参加することに意義のある展覧会だと思う。

[同25面]
審査したのは大沼映夫(洋画家)、金子賢治(東京国立近代美術館工芸課長)、酒井忠康(神奈川県立近代美術館長)、滝澤具幸(日本画家)の四氏。

 午前中に平面部門の作品を一覧して賞候補を絞り、午後から立体部門の選考を経て各賞を選んだ。角の化石を思わせるような形に仕上げた許斐さんの作品は「土の性質をよくつかみ、同時に現代的でシャープなフォルムを実現した。独特の形が印象的でオブジェとして存在感がある」と評価され、大賞(賞金二百万円=買い上げ)と決まった。次席には松永壮さん(33)=熊本市九品寺=のアクリル画「LIFE2000」が選ばれた。
熊日総合美術展「21世紀アート大賞2000」の審査が八日、熊本市世安町の熊日であり、グランプリの21世紀アート大賞(熊日賞)に許斐(このみ)良助さん(42)=天草郡大矢野町=の立体「漂泊のかたち」が選ばれた。ほかの入賞十一点、入選九十九点も決まった。熊日主催、県・県教委・県文化協会など後援。

 同賞は、二十一世紀に向けて熊本から新しい表現や芸術を発信しようと開かれている全国公募展。前身の総合美術展から通算して五十五回目、アート大賞に衣替えして九回目。
今回は平面部門に二百六十七人・四百十七点、立体部門に五十九人・七十九点の応募があった。このうち県外からは百五十六人・二百二十四点。

 受賞作に招待作家の作品を加えた展覧会は十二月五日から十日まで、熊本市千葉城町の県立美術館分館で。表彰式は十二月十日、熊日で。入賞作品12点は後日、紙面で特集するほか、熊本グリーンページでも紹介する。